7月1日から二日間で国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の総会がアイルランドのダブリン(Clayton Hotel Ballsbridge)にて開催されました。総会出席国は39か国、委任状を合わせると70か国が参加という、過去にない大人数の総会でした。
冒頭におけるIFSWルース=スターク会長の報告では、IFSWの加盟国は128か国、全会員数は300万人に到達したこと(最初の国際会議は1928年で5000名が参加)、そして、IFSWの創立90周年を迎えたことが確認されました。さらに、今後の伸展のためには、ソーシャルワークにおける長期的・公式的な調査が不可欠であることに加え、十分な資源はないがゆえに、それを連帯によって乗り越えることの重要性が語られました。
その後の協議の中で特筆すべき事項は以下の5点です。
1.IFSWの役員選挙、2.イスラエルソーシャルワーカー連合に対する問責、3.ソーシャルワーカー倫理原則の採択、4.教育諮問委員会(暫定委員会)の常設化、5.国連委員会(暫定委員会)の常設化。
まず1では、2名のIFSW会長候補者(ロシアのAntonina Dashkina氏・アルゼンチンのSilvana Martinez氏)による所信表明と質疑応答を経由しての投票となりました。Martinez氏はラテンアメリカ・カリブ海地域の会長でもあります。投票の結果、40対26(棄権4)でMartinez氏がIFSWの会長に就任することになりました。Martinez氏は、ソーシャルワーカーにおける社会変革を重視した活動を同地域で展開されており、前回ソウルでの世界会議においても、支配や搾取関係を象徴している「社会秩序」の変更の重要性を訴え、であるがゆえに、権力や政治との連携の必要性を力説されていた方です。このことからも、グローバル定義にある社会変革の内実を明らかにするとともに、その進展に対して、今後のIFSWへの期待が高まっています。他の役員選挙は、投票のあったのはヨーロッパ地域のみで、Ana Radulescu氏(ルーマニア)が選出されました。アジア太平洋地域は、副会長であったRose Henderson(ニュージーランド)が会長に立候補し、承認されました。
2については、パレスチナへの侵略に対する反対デモに参加する子どもの取り締りと、それに抗議するソーシャルワーカーの拘束を行っているイスラエル政府の状況があります。これに対して反対の行動を起こさないイスラエルソーシャルワーカー連合に対する問責について議論がなされました。倫理綱領に対する不作為が問われるものです。その結果、イスラエルソーシャルワーカー連合に対して戒告を行うこと、問責対象の基準をIFSWの理事会にて検討することが決議されました。国際ソーシャルワーカー連盟の加入団体として、日本ソーシャルワーカー連盟においても今後同様のことが起こらないように、さらなるソーシャルワーカー倫理に依拠した活動が求められるものと感じました。
3では、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の提案に当初若干の乖離がみられていたことに対して、IFSWとIFSWの双方の担当者による話し合いを通じて、共同案が作成されました。これは9つの倫理原則をもとに、それを仔細に表現したものとしてIASSWの倫理原則を用いることで調整を図った旨の報告があり全会一致で承認がなされています。
4において、教育諮問委員会が現在暫定のものであるため、それを常設化するという起案に対して、学校連盟との関係に配慮することや、委員選出の透明性の視点から異議がありました。検討の結果、さらに2年間の暫定委員会として承認されました。
最後の5では、IFSWの国連代表によって構成された国連委員会を暫定委員会から常設委員会とする提案については、全会一致で可決されています。
IFSWの新しい政策(policies)に関しては、議論する時間がなくなり、各国持ち回りの投票となりました。
なお、本会議では、IFSWの発展に多大な功績のあった人びとへの表彰がなされ、アジア太平洋地域の木村真理子会長(日本精神保健福祉士協会相談役・日本女子大教授)がAndrew Mouravieff-Apostol賞というIFSW最高位の賞を受賞されました(Mouravieff-Apostol氏は、1992年までIFSW事務局長を務められ、2001年に亡くなるまでIFSW名誉会長でした)。