旧優生保護法訴訟大阪地裁判決に対する声明
私たちは被害回復を退ける判決に強く抗議します
優生思想排除のためにも国は被害者の皆さんに謝罪し賠償する責任があります

11月30日、大阪地方裁判所は、原告らの請求を棄却するとの判決を言い渡しました。

私たちは、仙台地裁、東京地裁の請求棄却の判決を受けて、本年8月7日に「旧優生保護法被害者の国家賠償請求訴訟に関する声明」を発出し、国策による「人生被害」に対し、20年という除斥期間を適用することは社会正義・公平に著しく反することを訴えました。しかしながら今回の大阪地裁も除斥期間の趣旨を厳格に捉える判決を下し、司法による被害回復への期待を大きく裏切りました。

本判決において、旧優生保護法が障害者に対する合理的根拠のない差別であり憲法14条に違反することを明確に述べたことは、積極的に評価できると言えます。

しかしながら20年という除斥期間を理由に原告らの請求を棄却したことは、原告の方々の奪われた人生を慮ると、無念であり到底納得できるものではありません。

かつて優生保護法の下に行われた強制不妊手術は、当時の厚生省が「麻酔薬の施用」「欺罔(ぎもう)」を用いることを認めており、「本人に不妊手術の事実を分からせない(知らせない)で手術をする」というものでした。被害者が50年以上経たごく最近まで、自分の被害(人権侵害)をはっきりと自覚できなかったとしても何ら不思議ではありません。

また、被害を認識できていたとしても、「不良な子孫の出生の防止」という国策の下、手術を強制されたことを自ら訴えることが容易に行える社会状況ではありませんでした。半世紀に及ぶ優生保護法下での被害は、社会の偏見や差別によって否応なく封印されていたのです。当時の偏見・差別の実情について十分考慮したうえで、原告救済の道を開くことが、人権救済の最後の砦としての裁判所の務めであるはずです。

原告らは明らかに国策による人権侵害の被害者であり、人生の大半を苦しみの中で過ごさざるを得ませんでした。旧優生保護法は、今回の判決にもあるように差別を正面から容認し推進する法律であり、母体保護法への改正後も社会に影響をもたらしています。障害を医学モデルでとらえ、これを劣性とみる社会は形を変えながら今も私たちの社会生活に影を落としています。

旧優生保護法の運用には、国の動きを無批判に受け入れてきた自治体、医師をはじめとする医療機関や福祉施設の職員なども大きな役割を担っており、ソーシャルワーカーもその責任から逃れることはできません。人権と社会正義を原理とする私たちソーシャルワーカーは、憲法に大きく違反する法制度に無自覚に加担してきたことを真摯に受け止め、高齢である被害者が一刻も早く人としての尊厳と被害の回復できるよう、継続して支援していくことをここに表明します。

2020年12月22日

日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)

公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島 善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村 綾子
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫