2020年7月現在、旧優生保護法の下で強制不妊手術等の被害を受けた24名の原告による国家賠償請求訴訟が全国8カ所で提起されていますが、2019年5月28日の仙台訴訟、2020年6月30日の東京訴訟のいずれも原告敗訴の判決結果でありました。

旧優生保護法に基づく強制不妊手術は1955年をピークにその後漸減し1992年の1件を最後としますが、その間に全国の保健所、医療機関、障害者支援施設等においてソーシャルワーカーの配置が進んだことを考え合わせると、私たちソーシャルワーカーがこの重大な人権侵害に直接的に加担してきた可能性を否定できないこと、加担はしないまでも人権と社会正義を活動の原理としてきたはずのソーシャルワーカーがこの事態に問題意識をほとんど持たずにいたことが浮かび上がってきます。このことは、かつてのらい予防法の下でのハンセン病の人びとに対する強制隔離政策に、広い意味でソーシャルワーカーが加担してきたこととも符合します。らい予防法の廃止と同じ1996年に優生保護法は母体保護法に改正され、強制不妊手術等の規定は削除されましたが、法改正後も被害回復を訴え続ける当事者の声に私たちは無関心であったことを認めざるを得ません。

私たちソーシャルワーカーは、身近に起きていた重大な人権侵害を見過ごしてきたことへの反省の念と謝罪を表明するととともに、今後の裁判の動向を注視し、国策による人権侵害を司法府が認め、特別立法成立への道が開かれること、旧優生保護法被害者の皆さんの真なる被害回復が成されていくことを求め、下記の通り見解を表明します。

1 旧優生保護法の下での優生手術は憲法違反です。

国が定めた法律に基づく優生手術は、憲法第13条 「個人の尊重、生命・自由・幸福追求権」、第14条「法の下の平等」、第36条「拷問及び残虐な刑罰の禁止」等に反しており、明らかな違憲です。

旧優生保護法の違憲性が認められることは、被害回復の真の実現につながることにとどまらず、社会に根付く優生思想の克服への追い風となり、すべての国民に対する国の信頼回復を意味します。

2 国策による「人生被害」に対し、20年という除斥期間を適用することは社会正義・公平に著しく反するものです。

強制手術という事実によるさまざまな偏見・差別や近親者との葛藤、永久に子どもができないという現実を抱えた精神的・身体的苦痛は、被害者にとって今も続く「人生被害」であると言えます。歴史的な過ちに対する国の謝罪を求め、勇気を持って訴訟に踏み切った被害者が、裁判によりこれ以上「人生被害」を重ねることがないことを強く願います。

2020年8月7日

日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)

公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島 善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村 綾子
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫