2018年3月10日土曜日、世界のカレンダーに先駆けて、世界ソーシャルワークデーを記念した日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)のイベントが、国際ソーシャルワーク研究会との共催で、日本女子大学を会場に開催されました。後者の組織は、若手の国際ソーシャルワーク実践家や学生・研究者を、JFSWとの連携によって、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の活動に繋げようと、昨年有志によって創設されました。今年のイベントの内容は以下のとおりです。[参考]WSWD2018関連国内イベント案内チラシ

 まず、IFSWアジア太平洋地域会長である木村真理子が2017年9月中国の深圳で開催されたアジア太平洋ソーシャルワーク地域合同会議の報告をいたしました。また2017年11月にネパールでJFSWがネパールソーシャルワーカー協会との共催で開催した児童労働ワークショップに参加された高田環さんが、その報告をされました。ネパールは2015年の震災以来、児童労働問題が深刻化しています。


 続く講演の部では、シンガポールのロータリーファミリーサービスの所長、アムラン.ジャミルさんを招き、多民族、多文化の家族支援ソーシャルワークをテーマに、組織で働く専門職の訓練や基本理念について講演をいただきました。特に、異文化を理解する能力に関して言及され、違いを認めるだけではなく共通点を見るけることも大切だとのお話に、一同共感いたしました。

 当日のイベント参加者は40名、多文化との接点が増加している日本の実践現場におおいに刺激と示唆を与えていただきました。

[文責]木村真理子(IFSWアジア太平洋地域会長、IFSW副会長)

 

<アムラン.ジャミルさんの講演要約>

多文化家族へのソーシャルワーク
(Social Work with Multicultural Families)

Amran Jamil, MSW
Director,Rotary Family Service Centre, Singapore

 人口560万人の都市国家であるシンガポールは、中華系74%,マレー系13%、インド系9%という民族からなり、その他外国人、移民、留学生、外国人伴侶など多岐にわたる多文化・多民族の国である。その中で、ソーシャルワークの専門職に就くのは約13000人で、2009年から始まったソーシャルワーカーの登録制度で登録を受けたソーシャルワーカーが1600人ほどいる。この登録はSocial Work Accreditation Advisory Board(SWAAB)が、ソーシャルワーカーの基準を満たした者の登録を受け付けている。このSWAABは若いソーシャルワーカーのリーダー育成にも力を入れている。シンガポールのソーシャルワーカーの現場は、大きくcommunity social worker(地域ソーシャルワーカー)とmedical social worker(医療ソーシャルワーカー)大別されている。

 シンガポールには47のFamily Service Centre(ファミリーサービスセンター)という、地域の中(多くは集合住宅や公営住宅の一階部分)にある、家族の総合的相談に対応する機関がある。今回お話しする、私の所属するRotary Family Service Centreはその一つで、民間機関であるが、運営費は99%政府から出ている。現在、21人の多民族・多言語に対応するスタッフを抱えている。事業は、家族問題(夫婦や子育て問題、介護の相談他)のケースワーク、ひとり親や子ども、青少年のグループワーク(いじめ防止やひとり親のサポートなど)、そしてコミュニティワーク(独居の高齢者の見守りなど)を行っている。地域は、住宅街であり、多文化・多民族の家族へのソーシャル・サービスを提供している。

 最後に、Cultural Competence(異文化を理解する能力)であるが、ソーシャルワーカー自身の持つバイアスに気づくことから始めるべきで、民族だけでなくその家族の持つ特有の文化を、興味をもって理解することが重要である。また、異なる文化背景があっても、共通点があるので、その共通点を強みにして相手を理解することも同時に重要である。

[文責]平田美智子(JFSW国際委員)