私たち日本ソーシャルワーカー連盟は、権利擁護と社会福祉の増進を使命とするソーシャルワーカーによって構成された専門職団体です。

厚生労働省社会保障審議会児童部会に位置づけられた「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ」(以下、WG)が終了し、2021年2月2日にとりまとめが公表されたことを受けて、日本ソーシャルワーカー連盟としての見解を表明します。

この間のWGの議論において、私たちは、社会福祉士・精神保健福祉士の有資格者が実地訓練を重ねながら、スーパービジョンを含む新たな研修体系の中で養成されるべきという主張を繰り返し、また専門職団体の責務として、その研修体系を早急に構築することを提案してきました。一部には、新たな国家資格の創出に関する事実誤認に基づく報道もされていることから、従来の私たちの見解を改めて述べさせていただきます。

1 虐待対応をはじめ、児童福祉司がかかえる事例への対応は、子ども本人のみならず学校や周囲の大人、家庭や地域社会等の多様な問題を包括的に捉え、多職種が連携して取り組む必要があるため、ソーシャルワークを基盤とすることが必要です。児童福祉司の専門性の向上が喫緊の課題であることをふまえ、ソーシャルワーク専門職である社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を積極的に活用すべきです。
2 現任の児童福祉司の専門性の向上には現場指導(OJT・スーパービジョン・所内研修等)が重要であり、知識供与型の学習だけでは実践力を向上させるには不十分です。そのため、新たな国家資格の創出よりも現任者研修の強化が急務です。
3 児童相談所におけるソーシャルワーク機能の十分な発揮に向けて、長時間労働・精神的負担感の増大等の解消を図り、職員の待遇を改善することが重要です。また、児童福祉司の専門性の向上については、5年未満という短期間での異動では実践知や経験知及び職場内スーパービジョンやOJTが根付きにくいため、配置構造の変容を求めます。

東京都目黒区(2018年3月)や千葉県野田市(2019年1月)で起きた児童虐待の痛ましい事件に対して、私たちソーシャルワーカーは、尊いいのちを救えなかったことに忸怩たる思いを抱えています。そこで、子ども家庭福祉にかかわるすべての現任ソーシャルワーカーに対する研修等を強化し、目前の課題に速やかに対応していく所存であり、社会福祉士・精神保健福祉士を対象とした研修プログラムを開発し、「子ども虐待の予防と対応研修」を年度内に開始します。

「新たな国家資格創設」のためのカリキュラムの検討や実施よりも、いますぐできる対処を行うことで児童虐待を防止し、日本の未来を担う子どもたちの生命の尊重とそれを育むことのできる家庭、地域社会の実現に向けて、私たち日本ソーシャルワーカー連盟は、厚生労働省をはじめ関係機関・団体との連携のもとに取組む所存です。

2021年2月4日

日本ソーシャルワーカー連盟

公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 田村綾子
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本民夫